新型コロナ対策での行動制限がないゴールデンウィーク。3年振りということで、海外に足を運んだ方も多かったのではないでしょうか。ゴールデンウィークにハワイを訪れた日本人は昨年の5倍以上となったそうですが、昨年から続く物価の上昇や加速した円安で、日本人は財布の紐を締めざる得ない状況のようですね。
この最近よく耳にする「円安」ですが、なぜこんなにも急ピッチで進んだのでしょうか。また、これからどうなっていくのでしょうか。この記事では円高 円安についておさらいしながら、今話題の円安問題を読み解いていきましょう。
円高 円安 とは?
円高円安ってよく聞くんだけど、イマイチはっきり分からない・・・。そんな方のために簡単に説明しておきましょう。世界の通貨は、相対的に価値が決められているので「ある対象と比較して高いか、安いか」というので価値が決まります。
- 円高:円の価値がほかの通貨より高い
- 円安:円の価値がほかの通貨より安い
ということです。「あれ?でも、今円安が叫ばれているのに、1ドル129円と前より円の値段が上がってない?」そうなんです。そこが覚えづらいポイントでもあるので、ここでキチンと覚えてしまいましょうね。
円高 円安 覚え方
✱『円高』は、円の価値が上がるので、1ドルを買うお金は少なくなります。
✱『円安』は、円の価値が下がるので、1ドルを買うお金は多くなります。
円高のメリットとデメリット
メリット
海外旅行が安くなる
円高により、人気の海外旅行ツアーは安くなったりします。
輸入品が安くなる
輸入品が日本円に対して価値が下がっているので、買いやすくなります。オンラインショッピングなどでも輸入品の価格が下がります。
原油資源の輸入コストが下がる
日本はエネルギー資源が少なく、エネルギーのほとんどを輸入に頼っています。円高により原油やガソリンの価格が下がるため普段の生活のガソリン代や灯油代などのコストを削減できます。原油価格の低下は経済や生活に大きな影響を与えます。
輸入企業の原材料コストが低下する
鉄鋼や紙・パルプなどの原材料コストも下がります。製品が直接的に安くならなくても、関連業種の景気も上がります。
デメリット
外国人旅行客の減少
日本人にとっては海外旅行に安く行けるというメリットがありますが、外国人にとっての日本旅行は割高になります。外国からの旅行客の減少やお土産品の購入が減少するでしょう。
輸出産業にとっては業績悪化につながる
輸出企業の業績悪化が挙げられます。日本は輸出産業が大きな割合を占めているので、自動車会社などは、業績が下降しやすくなります。円高不況と呼ばれる状況をもたらす原因でもありますね。
デフレが進む
円高というのは通貨高ですから、言い換えれば物価は安くなることを意味します。デフレ不況下で円高が長引けば、デフレが進行したり、長期化する恐れも出てきます。
外貨預金が減る
外貨を買うには円高の方がいいですが、持っている外貨は円高時には減ってしまうことになるので円高前から投資している人にとってはダメージを受けてしまいます。
円安のメリットとデメリット
メリット
海外で日本製品が売れやすくなり、輸出産業の利益が増加
海外にものを売りやすくなります。海外からすれば日本製品が安く買えるようになります。日本は自動車メーカーなど輸出企業が多いので、自動車や電子部品などの輸出製品がよく売れるようになり、輸出産業が活発になります。企業の景気がよくなれば、従業員の収入が上がることにもつながります。
外国人旅行客の増加
円高の場合とは逆になるので、海外から日本へ旅行へ来る外国人観光客が増加します。
デメリット
輸入商品が高くなる
円安になると、輸入品率が高い日本では生活必需品の値上げが起こりやすくなります。賃金などは変わらないのに出費は増えてしまいます。
原油などのエネルギー資源のも値上げ
これも生活にダイレクトに響くので負担が増えます。
今回の円安問題
円高 円安のメリットデメリットがわかったところで、なぜ今回円安が急ピッチで進んだのかを考察していきましょう。1980年代バブル絶頂期と呼ばれていた時代に日本は円安傾向でしたが、1991年のバブル崩壊とともに円高傾向に向かい、1995年には1ドル=80円代を経験しました。それにより、日本は長引く不況を経験することとなりました。
現在、日本は2022年3月には1ドル=120円を超えて、さらに円安傾向に向かっています。ということは、本来ならバブル時代のように景気が好転していきそうなものなのですが、現実には円安=好景気という図式が、なかなか現代では難しくなっています。
円安のデメリットにあるように、輸入商品と原油等のエネルギー資源が高くなります。バブル時代には、これに比例して給料も上がっていきましたが、現代ではそうではありません。さらに、この円安が急激に加速した理由として、世界的に拡がったコロナの影響は多大なものがあります。加えて、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻と、それに対する各国のロシアに対する経済制裁が影響しているのは紛れもない事実です。
輸入品が高くなったのなら、値段が安定している国産品を買うという動きが多くなれば景気が下がるのも食い止められるかもしれません。しかし残念なことに、そもそも野菜や肉など、国産品の方が値段設定の高いものも多いこと、商品の値段が上がったから国産品に替えるというより「買うのを控える」という消費者の傾向があることも影響しているようです。
これからの予測
アメリカ・ヨーロッパは金融の引き締めに動いていますが、日本は金融緩和を続けており、金融政策の方向性が違うため、金利差の拡大が起きています。さらに、資源や原材料の輸入価格が上がっていることによる、日本の経常収支悪化に伴い円安が強まっています。そのため、年内中に140円台も有り得るのでは?という予測が出ています。円安のピークは、5月と12月が有力とも言われていますので、景気の回復にはまだまだ時間がかかりそうです。