昨年12月、「日銀は長期金利の上限を0.5%引き上げへ」のニュースに注目が集まりました。とくに心配されたのは「住宅ローンの金利」で、「変動金利」から「固定金利」に借り換えるべきか?と不安が広がりましたよね。
欧米の中央銀行が利上げを進める中、動かなかった日銀。なぜこのタイミングで利上げになったのか、世界の政策金利の動きから見ていきましょう。
政策金利とは?わかりやすく解説
政策金利とは、中央銀行が金融政策として定める金利のことです。日本の中央銀行とは日本銀行(日銀)になり、一般の金融機関にお金を貸し出す際の金利になります。金融政策には「金融緩和」と「金融引き締め」があり、これらは景気をコントロールするための施策です。
金融緩和
「金融緩和」は、景気が悪いときに政策金利の引き下げ、資産の買い上げなどによって、お金の供給量を増やします。その結果、企業や個人はお金を借りやすくなるため経済活動が活発になり景気が良くなります。
つまり、景気を活性化させるための利下げが「金融緩和」です。
金融引き締め
「金融引き締め」は、景気が良すぎてインフレになったときに実施されます。インフレとは、モノ、サービスの値段が上がることでお金の価値が下がること。インフレが過度のときは、政策金利を引き上げ、お金を借りにくくし経済活動を抑制します。
つまり、景気の過熱を抑えるための利上げが「金融引き締め」です。
2022年の世界の政策金利の動き
世界的な感染症のコロナ対策として、世界各国では「金融緩和」を実施してきました。
アメリカ
米国では、インフレが過度に進み、米国のFOMC(米国連邦公開市場委員会)では強力な利上げが実施されました。その結果、12月の生産者物価指数は前年比6.2%と鈍化し、インフレ鎮静化がすすんだと見られています。今年の利上げのペースが緩やかになる予想がでています。
ヨーロッパ
欧州(ドイツやユーロ圏)は、昨年末からの経済見通しとしてサービス業を中心とした欧州経済の回復と、中国のゼロコロナ解除に伴う需要回復を見込んでいます。
ドイツ12月の生産者物価指数は前年比21.6%、英国では同月比10.5%と高止まりを見せました。インフレは高すぎるため、複数回の0.5%の利上げが必要だと言われています。
世界各国の政策金利(2022年12月時点)
- 日本:-0.1%
- 米国:5%
- 欧州:5%
- 英国:5%
日本の政策金利だけマイナス、デフレ対策のために金融緩和が継続されています。米国をはじめ、世界各国の利上げは日本の円安を加速させました。円安の影響を受けて、電気をはじめ、あらゆるものの値段が上昇しましたね。
日本の金融緩和について
日銀は、2013年から物価上昇2%を目ざして「金融緩和」を実施してきました。
しかし、物価は2014年の消費増税をのぞくと目標を達成できず、2016年日銀はマイナス金利政策の導入を決めました。また、日銀の超低金利政策によって、住宅ローン金利も低い水準が続いています。政策金利の影響を大きく受ける住宅ローンの「変動金利」は銀行間の顧客獲得競争もあり、年0.3%前後という前代未聞の低水準を維持することとなりました。
世界各国に合わせて「金融引き締め」をすれば住宅ローン金利も上がりさらに厳しい状況になると思われます。
最後に
12月の日本の政策金利は、-0.1%です。世界各国ではコロナ対策で実施した「金融緩和」による過度インフレが進み、「金融引き締め」へ舵をきりました。
「金融緩和」を継続していた日本でしたが、日銀が突然利上げを発表したことで不安が広がりました。日銀の黒田総裁によると今回の長期国債の利上げは「金融引き締めを意図したものではない」と説明しています。
今年4月には黒田総裁が任期満了により退任します。誰が次の日銀総裁になるのか、金融政策に変更はあるのか気になるところですね。また、長期金利の上昇は企業向け融資の金利、住宅ローンの固定金利が上昇する可能性もあります。コロナ禍から回復途上の日本、今回の利上げがプラスになるのかマイナスになるのか注意してみていく必要がありそうです。